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本とのこと

本と映画と音楽の話。

【映画感想】「怒り」を見て「悪人」を見て息が苦ししい

久しぶりの土曜日休みで出かけた後、まだ時間が早く、せっかくの休日をまだ楽しみたいと思ってTSUTAYAで映画でも借りようと思いついた。一週間前に映画館で「怒り」を見て、すごく良かったので同じく原作:吉田修一×監督:李相日がタッグを組んだ「悪人」を見てみたくなった。この映画が話題になっていた時期は「なんか暗そうな映画だなあ」と思って敬遠していたのだけど。たぶん僕と同じように「怒り」を見た後「悪人」を見たくなる人も多いかと思うので感想を書きます。

感想は思ってた通り最初から最後まで暗かった。なんだか息が詰まって苦しくなった。

映画「悪人」のあらすじ

長崎の田舎の解体業者で働く清水祐一(妻夫木聡)は出会い系サイトで出会った博多の生命保険会社に勤める石橋佳乃(満島ひかり)に想いを寄せる。佳乃と約束をして、長崎からはるばる車を走らせて博多までやってきた祐一だったが、佳乃は予定があるからと言って目の前で佳乃が想いを寄せる男、増尾圭吾(岡田将生)の車に乗って消えてしまった。

翌朝、佳乃は遺体として発見される。

数日後、祐一の携帯に一通のメールが届く。それは以前出会い系サイトでメールのやりとりをした、佐賀の田舎の紳士服店で働く馬込光代(深津絵里)からのものだった。

佐賀駅で会う約束をした二人。長崎から車を飛ばして現れた金髪の祐一に光代は戸惑うが———

映画「悪人」のよかったところ

 田舎のリアルな閉塞感がすごい

祐一みたいに仕事して飯食って風呂入って親を病院連れて行って...みたいな代わり映えのしない毎日とか、悪徳商法に騙される祐一のお婆ちゃん(樹木希林)とか、小さな頃から学校も職場もずっと家と国道の範囲で生活している佳乃とか、都会の暮らしと比べたら何も楽しいことがない田舎の閉塞感がとてもリアルに伝わってきた。こんな若者は全国の田舎にごまんといるだろうし、こんな老人もいっぱいいる。見ているこっちも息が詰まってきてつらい。

妻夫木聡のイケてなさがすごい

妻夫木聡さん。イケメンで、かつ髪を金髪にしていてもちゃんと田舎のイケてない若者を演じられていてすごい。人に好かれたりモテる要素って顔だけじゃなくて、服装や趣味や喋り方やその人の内面から出るオーラを含めた総合的なものだなーと再認識した。

深津絵里美しすぎる問題

光代役の深津絵里さんが綺麗すぎる。深津絵里さん好きすぎる。ちなみに満島ひかりさんも好きです(どうでもいい)。たぶんこの光代って本当はもっともっと地味な顔の女性なんだと思う。地味さは出ていたけど深津絵里さんみたいな美しい人は出会い系サイトでメールのやりとりしなくてもきっと紳士服店のお客さんとかと出会って田舎で幸せな家庭を築いていることでしょう。

樹木希林の演技がすごい

樹木希林のおばあちゃん役がすごく良かった。おばあちゃんの孫を想う気持ちや、悪徳商法に騙される様や、メディアの取材陣に翻弄される姿がすごくリアルだった。老人の役をとても上手く演じられる貴重な存在なんだなーというのを再認識。そりゃどの映画見てもおばあさん役といえば決まって樹木希林が出てくるわ。納得。

物語って歳をとるほど楽しめる

この映画に限らず人生いろいろ経験を積んで歳をとってくると物語や演技に共感できる部分が増えてきて、子供の頃や若い頃よりも映画を楽しむことができるなあとふと思った。

例えば殺された佳乃の葬式で、お父さん(江本明)が感情を露わにするシーン。あんな風に感情が爆発してしまう気持ち、子供の頃だと理解できないけど、大人になって何度も葬式の場面を経験するとあの悲しみも怒りもわかる。

娘が殺された事件のきっかけとなった増尾をどうしようもなく憎む父親の気持ちも、父親になったからわかる(そして「さまよう刃」を思い出した)。

田舎の集会所みたいなところで老人達を集めて高額な商品を売りつける悪徳商法のシーン。催眠商法というやつだ。若いときなら「こんなん普通ひっかかっらんやろ」って見てただろうけど、今ならわかる。田舎で娯楽の少ない老人達は面白い話を聞かせてくれるというだけで業者を信用してしまうし、娯楽と居場所を求めてその集会に行ってしまうんだよね。それで買っちゃう。知ってる。うちの婆ちゃんも騙されてたから。そういうことも知ってしまっているからこの映画の田舎のどうしようもなさとか悲壮感がリアルに伝わってくる。

映画「怒り」と「悪人」を続けて見た感想

吉田修一×李相日作品を2つ通して見て、この2つの作品に共通している点。

  • 社会問題が何個も詰め込まれている
  • 暗くて重い気持ちになる
  • 役者の演技が素晴らしい

もっとありそうだけどこんなもんかな。「怒り」のほうがかなり好きだった。感情の揺さぶられ方も音楽や映像の撮り方も「悪人」に比べて圧倒的に「怒り」がよかった。「悪人」も映画館で見ていたらもっと評価も違ったのかも。今後も吉田修一×李相日作品が出てきたら絶対に見ることになると思う。

まとめ:悪人はだれ?

この映画のタイトルの「悪人」というのは、人殺しをした犯人なのか?殺したくなるほど相手の感情を煽った被害者なのか?殺されるきっかけを作ったのに平気な顔をして被害者や遺族を笑う男なのか?殺人犯の家族を執拗に追いかけるマスコミなのか?殺人犯の育児を放棄した両親なのか?本当の悪人は誰?ということを問うているのだと思う。

殺人事件で一番悪いのはやっぱり犯人なんだけど、ひたすら一方的に犯人を叩くのではなくて、その犯人が殺人を犯すことになったいきさつや経緯、人間関係、家庭環境や社会問題にも目を向けて理解しないといけないなあと改めて考えさせられた。