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【映画感想】「何者」は大学生版「桐島、部活辞めるってよ」なのかも

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出典:i.ytimg.com

去年朝井リョウさんの小説を初めて読んだ。それが「何者」だった。小説がすごくおもしろかったから映画も見たくなって、とりあえず他の人のレビューとか読んでみるとあんまり評価良くなかったのでうーんと迷っていた。

結局見た。

感想はおもしろかったけど小説読まずに見たかったー!

映画「何者」のあらすじ

就活中の大学生、元演劇部の二宮拓人(佐藤健)は同じく就活中のバンドマン神谷光太郎(菅田将暉)と二人暮らしをしている。ある日、拓人が思いを寄せる友人の田名部瑞月(有村架純)が、同じく就活中の小早川里香(二階堂ふみ)の部屋に遊びにきたときに拓人、光太郎と同じアパートの上の階であることに気づき、二人を里香の部屋に招く。里香の提案で「ここを就活対策本部にしよう」ということで4人意気投合。そこに同居人の宮本隆良(岡田将生)が帰宅する。

脚本を書くことが得意で演劇に関わる仕事に興味があるが、演劇部時代の親友である烏丸ギンジとの確執で自分の気持ちに素直になれない拓人。大学では人気の元バンドボーカルで誰にでも好かれる快活な性格の光太郎。真っ直ぐで芯があり、拓人と光太郎の二人をいつも見守っている瑞月。はたから見ると痛々しいくらい誰よりも就職活動に熱心だがなかなか内定のもらえない里香。里香の彼氏で同居人、就活や企業に勤めることに疑問を唱える意識高い系の隆良。SNS(Twitter)が普及する現代を生きる彼らの人間関係と就活のリアルを描く。

映画「何者」のよかったところ

配役が原作のイメージとマッチしている

原作の小説を読んでいるときになんとなく想像していた人物像とキャストが合っていた。

拓人役の佐藤健は見た目のイメージは違ったけど分析好きで常にもやもやと何か考えている拓人っぽさがよく演じられていてよかった。

一番ぴったりだったのが光太郎役の菅田将暉。最近いろんな映画にこの人出てくるだけあってめっちゃ演技上手い。小説で想像していた光太郎がそのままスクリーンに出てきた感じ。瑞月役の有村架純もちょっとだけイメージ違うけどちゃんと瑞月だったし、里香はもうちょっとダサい顔のイメージで二階堂ふみだと綺麗すぎると思ったけどちゃんとイタさが出てた。隆良役の岡田将生はもうあの意識高いくるくるパーマと服と眼鏡だけですでに合格だった(笑)。初登場シーンで白いロードバイクをアパートの部屋に持って入ってきたときはもうイメージにマッチしすぎて「意識高え!」って笑いそうになった。拓人のバイト先のサワ先輩、山田孝之が大学院生の役というのは年齢的に無理があるけど、圧倒的に尊敬できる先輩感が出ていてよかった。

菅田将暉演技上手い、歌もわりと上手い

光太郎役の菅田将暉がバンドのボーカルとして卒業ライブをやっているシーン。このシーンで4曲ぐらい歌うんだけどちゃんと本人が歌っている。わりと歌上手いしこの曲が大学生バンドっぽさを出しながらもわりといい曲。

中田ヤスタカの音楽

この映画の劇中曲はなんと中田ヤスタカが担当している。中田ヤスタカ×米津玄師のコラボで話題になっていた主題歌だけかと思っていたら映画のオープニングで「音楽:中田ヤスタカ」とでてきてそこで初めてそのことを知ってテンションが上がった。劇中曲は意外にもピアノやギターが中心のアコースティックな曲が多くてびっくりした。ヤスタカさんちゃんと仕事してる!でも映画中にちょいちょい挟まれる烏丸ギンジの劇団「毒とビスケット」の公演で流れるBGMが中田ヤスタカさんらしいどぎついテクノ(Perfumeで言うなら「GAME」や「edge」みたいな)でテンションが上がった。もっと長い尺で聴きたかった。

NANIMONO (feat. 米津玄師)

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  • 中田ヤスタカ
  • エレクトロニック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

SNS時代に生きる若者の独特の空気感

みんなといるのにスマホいじってTwitter見てたり、Twitterにつぶやいてたり。当人が部屋からいなくなった瞬間に残った者たちがいなくなった者たちをネタにして笑ったり。重要な話(喧嘩)をLINEでしてたり。SNS全盛の若者の嫌な空気感がすごくよく出ていてよかった。小説読んでいた時もだけど何回も「あるある!」ってなった。

拓人が、同居しているのにTwitterで会話している里香と隆良のタイムラインを光太郎と瑞月に見せてネタにしようとした時に3人の間に流れたあの微妙な間と苦笑いのリアルさはこの時代の若者にはすごくよくわかると思う。

 映画「何者」の感想

小説より先に映画見たかった!原作読んで展開を知っていたから後半のオチにびっくりできなかったのはすごくもったいない。映画館で「そういうことかー!!!」ってびっくりしたかったー!ぞっとしたかったー!だから原作読んでない人にはかなりこの映画おすすめします。でも映画見ずに読んだから去年の僕はこの小説の後半のオチに驚愕して「傑作だこれ!」と思ったわけで。これ原作あり映画のどうしようもない宿命ですね。映画も小説も両方とも展開を知らない真っさらな状態で楽しみたいよー。

この話って一切「大人」が出てこない(面接官ぐらいしか)。その辺も大人不在で横のつながりだけの閉じた世界で生きがちな現代の若者の空気感が出ていてよかったのかも。作者の朝井リョウさんみたいな若い作家さんだからこそ作れる物語だなー。作家さんってほとんどが自分より年上の大先輩ばかりだから自分より年下の朝井リョウさんみたいな作家は貴重。年下だから自分が今まで経験してきたことや見聞きしたたことが物語に出てくる。「あーこんな時期自分にもあったあった」という楽しみ方ができる。自分はもう大人だからそんな風に余裕を持って楽しむことができたけどこれ実際に就活中の学生が見たらどんな気持ちだろう。かなりしんどいと思う。朝井リョウさんの他の作品も読んでみたい。映画感想のつもりが小説寄りの感想が混じってしまった。

まとめ:大学生のもやもや

 この映画の表面上のテーマは「就活」だけど本当のメインは若者の人間関係なんだと思う。表面上は友達でも内心ではあざ笑っていたり、あざ笑われていたり、人前でいい格好したくて必死だったり、自分は人とは違うって思い込んでいたり、若者は閉じた世界で自意識過剰にいろんなもやもやを抱えながら生きている。同じく朝井リョウさんの「桐島、部活辞めるってよ」は高校生という閉じた世界のもやもやを描いていたけれど、「何者」はその大学生版と言っていいかもしれない。

そういえば小さな頃から「他の人と同じようにしなさい」と何年も教育されてきたのに、就活が始まると急に「あなたの個性はなんですか?」って聞かれるよね。それを考えると「就活」って他人の目ばかり気にして抱えるもやもやから解放されるための最後の試練なのかもしれない。