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「火花」又吉直樹おもしろいです【レビュー・書評・感想】

今まで文庫本しか買ってこなかったけど、先日コンビニ人間を読んでからというもの重くて高い単行本を読むのも悪くないなと考えが変わってきた。

火花を読んだ感想は、芸人しか書けない小説だと思った。自分がもし小説家だったとしてこんな新人作家が出てきたら相当焦ると思った。いろんなおもしろいが詰まった小説。

「火花」を読んだ理由

単行本、次は何を読もうと思って本屋で色々な表紙を見ながら目に入ったのが又吉直樹さんの火花だった。前回読んだコンビニ人間で「芥川賞受賞作品って思っていたよりずっと読みやすい」ということに気づいたのと、単行本だから手がでなかっただけでずっと読みたかったというのがあって次はこれだと決めた。

新書の「夜を乗り越える」を読んだ影響で、まだ火花は読んでいないのに僕はすでに又吉さんのファンだった。

「火花」のあらすじ

熱海の花火大会。ビールの入れ物を裏返して作られた、誰も立ち止まらないステージの上で主人公の徳永はお笑いコンビ・スパークスとして「飼っているセキセイインコに言われたら嫌な言葉」というネタを披露していた。その次の出番の柄の悪そうなコンビ・あほんだらの神谷は「私ね霊感が強いからね顔面を見たらその人が天国に行くのか地獄に行くのかわかるの」となぜか女言葉で言って通行人を一人一人指差し「地獄、地獄、地獄、地獄」と叫んでいた。その後吞みに行くことになった2人、徳永は神谷に「弟子にして下さい」と頭を下げていた。

「火花」のよかったところ・感想

というわけでネタバレなしで感想を書いていきます。

純文学なのに笑える

物語の中でお笑いコンビのスパークスやあほんだらが披露するネタや、徳永と神谷の日常的なかけ合いに又吉さんらしい笑いが詰まっていて、純文学なのに笑わせてくれる。小説を読みながら声出して笑ったのは初めてかもしれない。そしてそのネタから又吉さんって本当に頭がいいなーと感じて、笑いながら感心するという不思議な体験をした。この小説を読んだ他の作家さんはどう思っただろう。「やられた」と思った気がする。

又吉さんの思想が見える

物語の中で徳永が”共感至上主義”や”何かを批評すること”についての意見を語る部分は「夜を乗り越える」でも書いていた意見と同じものだったし、徳永と神谷がやりとりするメールの最後に付いてくる一文は又吉さんが本も出している自由律俳句みたいなものなのかなと思った。そういう、新書で語られていた又吉さんの思想を小説の中で見つけられると「ああ又吉さんが書いた小説だ」と嬉しくなった。

笑いについてすごく俯瞰的

徳永や神谷が笑いに対する考え方を語っている場面がいくつかあって、芸人さんって笑いについてこんなに俯瞰的に考えているのかと驚いた。一般人からは出てこない芸人にしか聞けない話がたくさん詰まっていておもしろい。

漫才って文字で読んでもおもしろい

物語の中でお笑いコンビ・スパークスやあほんだらの漫才の内容がいくつか描かれている。今までテレビで見てきた芸人さん達おかげで、コンビが喋る声の具合や間の取り方などが脳内で補間されて再生された。漫才って文字で読んでもおもしろいっていうのは新しい発見だった。

主人公・徳永=又吉直樹

主人公・徳永のキャラクターがほとんど又吉さんに近くて、本人を想像しながら読んだ。あと徳永の常にいろいろもやもや考えているこの感じは「何者」の小説に出てきた拓人に近いものを感じた。拓人もきっと作者の朝井リョウさん本人に近いキャラクターな気がするし小説家ってこういうタイプの人が多いんだろうか。自分もこのタイプに近い気がする。小説家になろうかな(勘違い)。

まとめ:又吉直樹はやっぱり芸人

賛否両論ありそうな火花の結末。最後の一文の情景が徳永や神谷の”美しい景色を台なしにする”という笑いの考え方に沿っていて、「ああやっぱりこの人(又吉直樹)は作家であり芸人なんだなあ」としみじみ思った。

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