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「沈黙」遠藤周作を読んで考えた宗教のこと【ハリウッド映画化・小説感想】

又吉直樹さんの新書「夜を乗り越える」の中で遠藤周作の小説「沈黙」が紹介されていた。又吉さんの実家はキリスト教徒らしくてこの本もキリスト教について書かれた本らしかった。
失礼だけど信者じゃない自分からしたらキリスト教(というか宗教全般)って胡散臭くて近寄りがたいイメージがあった。
だけど小学生の頃の友達の家だったり、又吉さんの家だったり、家の近くに協会があったり、日本にもキリスト教徒の人は少なからずいるし、アメリカなんて8割がキリスト教徒だ。
というわけで「得体の知れないもの」として置いておくのではなくてそれに関わる小説を読むのは悪くないと思った(というか単純に興味があった)ので昨年読んだ。

この小説が「沈黙 -サイレンス-」という名前でハリウッド映画化されて今月(2017年1月21日)日本でも公開される(窪塚洋介さん、浅野忠信さん、小松菜奈さん、加瀬亮さんら日本人キャストも出演)ということなので感想を書いてみる。

沈黙のあらすじ

島原の乱が収束して間もない頃、イエズス会の高名な神学者フェレイラが日本で棄教したという報せがローマに入る。
フェレイラの弟子であるロドリゴ(主人公)は日本に潜入するために立ち寄ったマカオで、日本人でキリスト教徒であるキチジローという青年に出会う。
キチジローの案内で日本に潜入したロドリゴは日本の隠れキリシタン達に歓迎されるが...

「沈黙」を読んだ感想

なぜ日本人はキリスト教を信じたか

身分が低くてきつい年貢を納めるために働くだけの毎日で、今日も明日もなんの生きる喜びも希望もない人達。その人達にとって「信じるものは救われる」キリスト教は生きる喜びを教えてくれるありがたいもので、唯一の楽しみみたいなものだったんだなと思った。

それがわかると隠れキリシタンの人々が、司祭のロドリゴや教会や十字架をありがたがる気持ちや、踏み絵を踏めない気持ちもだんだんわかってくる。

なぜキリスト教のために死ねるか

この物語には江戸時代初期のキリスト教徒弾圧の様子が生々しく描かれている。棄教(キリスト教を棄てること)よりも死を選ぶ人もいる。初めはキリスト教徒の人々が宗教をやめることよりも死ぬことを選ぶ理由が理解できなかった。

だけどキリスト教徒の人々が信じている「神様」を「自分の家族」とか「恋人」とかに置き換えてみるとしっくりきた。人間って大切な人を裏切ったり失くしたりするぐらいなら死を選ぶことがある。

日本でキリスト教を信じる意味

主人公のロドリゴは物語の後半でキリスト教を棄てるか否かを迫られる。その選択がキリスト教を信じる意味を問われる究極の選択になっていて、心をかき乱される。

宗教って人生の攻略本みたいなものか

沈黙とはあんまり関係ないけど、昨日仕事でプログラムを書いていて、「自分が書いてるこの書き方って一般的に正しいのかな...」って不安になることがあった。

プログラミングの場合、こういう時は本を読めばいい(リーダブルコードとか)。

ゲームの場合、行き方がわからなくなったら攻略本を読めばいい。

人生の場合は?

学生の頃は教科書があって、問題があって、答えがあって、「正しいやりかた」っていうのが示されていたからそんな不安はなかったけど、社会に放り出されると急に答えがなくなる。

だから、何か問題があったときにどうするのが一番良いのかとか、自分の生き方についての「正しいやりかた」っていうのが急にわからなくなる。

そういう時のための攻略本が宗教なんだと思った。この宗教ではこう言ってるから、聖書にこう書いてあるから、こうしとけば間違いない、「正しいやり方」だ、って自分を納得させて安心するためのもの。

攻略本を見ずにゴールするのが好きな人もいるし、攻略本を読みまくってゴールするのが好きな人もいるし、どの攻略本を買うのかも自由だ。宗教ってそういうものかって理解するとしっくりくる。

まとめ:知らないものを少し知る

得体の知れないものを得体の知れないもののまま置いておくよりも少しでも触れてみたほうが人生に拡がりが出る。小説とか映画って、そういう知らないものを少しだけ知れるきっかけになって良い。

沈黙を読んでよくわからなかったキリスト教徒の人達の気持ちが少し理解できた。

知らないものを少し知れると、よくわからないまま毎年祝っていたクリスマスもよくわからないまま歌わされていた結婚式のときの賛美歌も、意味を考えながら味わえる気がする。

苦手な人についてもその人のことについて少し知るとだんだんと気持ちが理解できてくるものだし、苦手な分野の勉強についても少しかじるとだんだんと好きになったりする。

知らないものについて少し知るって大事だなと改めて思った。

「沈黙」が気になった人は小説か映画でぜひ。