カルテットで増した満島ひかりさんの好きさと、妻夫木聡さん主演なら間違いないという安心感と、妻夫木&満島といったら悪人を思い出すし、この映画のタイトルや雰囲気も監督は違うけど「悪人」や「怒り」を連想させるし、見たい要素がいっぱい。
というわけで見てきました。映画「愚行録」。
感想はまた嫌な映画を見てしまった(褒め言葉)。見終わった後は沈黙するしかない。
映画「愚行録」のあらすじ
週刊誌の記者である田中(妻夫木聡)の妹・光子(満島ひかり)が育児放棄の疑いで逮捕された。
兄を慕う光子の面会に足を運ぶ一方で、田中は田向(たこう)一家殺人事件という未解決のまま一年が経とうとしている事件について改めてこの真相に迫るための取材を開始する。
殺された田向浩樹 (小出恵介) の同僚・渡辺正人 (眞島秀和) 。殺された妻・友希恵 (松本若菜) の大学時代の友人・宮村淳子 (臼田あさ美) 。淳子の元恋人であった尾形孝之 (中村倫也) 。田向浩樹の元恋人であった稲村恵美 (市川由衣) 。
取材関係者の告白が進むにつれて事件の真相が明らかになっていく...
映画「愚行録」の評価
自分が最近見た暗くて嫌な気持ちになる映画の中でのこの映画の評価。比較するとしたら好きな順はこんな感じ。
ミュージアム = 怒り > 愚行録 > 悪人
これ僕の好きな順であってどの映画もおもしろいのでこのあたりの映画が好きな人にはおすすめです。
あ、よく考えると全部妻夫木くん出てる(!)
映画「愚行録」の感想・よかったところ(ネタバレなし)
この映画の感想やよかったところをネタバレしない程度で書きます。
告白形式の映画っておもしろい
関係者それぞれから語られる告白によって事件の真相が明らかになるミステリーっておもしろい。この形式、湊かなえさん原作の映画「告白」を思い出した。同じ人物(田向夫婦)のことでも語る人によって見え方や解釈が全然違う。
死人にくちなしだけど当事者の田向夫婦から見たとしたらどういう見え方になっていたんだろう?
これって僕たちの日常でもよくある。誰かから誰かの悪口を聞いてその人に悪いイメージを持ったとしても、悪口を言われた本人から話を聞くとまた全然イメージ変わって逆に悪口を言ってた人が悪者に見えたり。
本人達にとってはどちらも「本当」なんだ。じゃあ「本当」ってなんだ。わかんない。
仕掛けられた3度の衝撃?
この映画「仕掛けられた3度の衝撃!」っていうコピーでPRされてるけど驚愕!みたいなどんでん返し!みたいな感じではない。
見終わった後にそういえば3度の衝撃って、あれとあれとあれだよね。この3つで合ってるよね、みたいなそんな感じ。
自分的にはこういう「どんでん返しありますよ!」みたいなキャッチコピーはあんまり好きじゃない。そういうコピーつけといたほうが興味ない人の気をひくには良いんだろうし、お客さん入れるためにはしょうがないんだろうけど。
そういうのない方が変な期待持たずに楽しめるし、ない方が実際見たときの衝撃も強くなるからできれば知らずに楽しみたい。
「愚行録」に「怒り」みたいな坂本龍一さんの劇中曲や、宮崎あおいさんや広瀬すずさんの叫びに胸を震わされるような激しい衝撃はない。この映画のそれはもっと静かで、というか無音で、じっとりとした衝撃だ。
役者さんの演技素晴らしいです
毎回のことながら妻夫木聡さんの演技ってストーリーを邪魔しないというか、自然すぎてその役にしか見えないというか、ほんと素晴らしい。
満島ひかりさんって喋り方とか素のときもこんな感じだよねって演技すると思ってたけど今回は違った。心が壊れてしまったような光子の演技にぞくぞくさせられた。でも回想シーンの光子はいつもの満島さんに近くて、上手く演じ分けてるんだなーって。
他の方々も素晴らしいんだけど特に印象に残ったのは宮村淳子役の臼田あさ美さんとその元彼尾形孝之役の中村倫也さん 。大学生時代の姿→それを語る現在の姿が絶妙で、あーこの大学生の数年後の大人になった姿って絶対こんな感じだわー!こんな見た目でこんな生き方だわー!ってなってすごいしっくりくりきておもしろい。
小説的な仕掛けを上手いこと映画に
この映画の仕掛けってすごく小説的だと思う。ネタバレはしたくないから詳しく語れないんだけど走る光子が出てきてはっとするあのシーンとか後半のだんだんと真相がつながっていく部分が、小説だったらやりやすいんだろうけどそれを映画で見事に表現している感じがして、映画を見ているのに夢中で小説を読み進めているときみたいなそんな感覚があっておもしろかった。
演出っておもしろいなあ
映画冒頭の主人公・田中のバスでの行動で「ああ、こいつは善人じゃないんだな」ってわかるシーンとか、田向浩樹の同僚・渡辺正人が田中の名刺の上にビールジョッキ置くシーンとかそういう細かい演出でその人物の人となりがわかるときに「ああ映画っておもしろいなー」って思う。
まとめ:みんながみんな愚行
全体的に暗い(画面も暗い)話なんだけどゲームみたいな男と女のかけひきやキラキラ(というかチャラチャラ)してる大学生時代の話にわくわくそわしたり、スクールカースト的な部分もあったり、過去と現在の対比や、じっとりとした衝撃や、嫌な後味などなどいろいろな要素が詰まっていて、見る前に想像していた以上にエンターテイメントしてました。
登場人物全員正しい人はいなくてタイトル愚行録の「愚行」は全員のそれを指しているんだと思う。
これを見て酷いやつらだと笑っているあなたの過去も、側から見たら、「愚行」なのかもしれない...なんて。
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